この度、nap galleryでは 12月10日(土)から1月28日(土)まで、蔵真墨個展「Men are Beautiful」を開催いたします。 nap galleryにての初めての個展となります。また本展と同時に、新写真集『Men are Beautiful』が刊行されます。
Men are Beautiful
これらの写真はおもに東京の路上で撮影したスナップ写真である。スナップ写真というのが難しい時代でポートレイト的な写真が増えた。時折訪れる海外で撮影した写真があるのと、バーやレストランなどで撮影した写真もすこしある。路上は誰でもがそこに行って、 自由に見たり見られたりする公共空間であるし、飲食店も私が一人で自由に出入りできる場所だ。
私は男性の写真を撮ろうとだけ決めて街を歩き、異性としての魅力だけでない何か人としてのきらめきのようなものを感じたときにシャッターを切るように心がけた。ほとんどが東京で撮影した写真なのに外国人らしき人が多い写真群になったのはどうしてだろうか。 実際、東京には今たくさんの外国人がいる。観光客が多いし、働いている人も多い。
これは仮説だが、日本人男性の魅力が減少しているのではないだろうか。日本人の魅力は比較的奥ゆかしいものであるだろうし、私の好みがあるかもしれない。そして魅力のある日本人男性はもちろん存在する。しかし 2016 年の東京は男性も女性も何だか人目を気にして、個人の魅力が自然にあらわれるような雰囲気ではないのだ。
なぜ男性の写真を撮ろうと思ったのかは「美しさ」の対象について私のやり方、すなわちストリートスナップで確認したかったからだ。歴史的に美しさの対象はおおむねが女性 だったが、美しさの範疇を広げる作品が先達により作られてきた。そこに私もすこしでも 加担しなくてはならないと思ったのだ。
アメリカ人の写真家、ゲリー・ウィノグランドの写真集『Women are Beautiful』が刊行されてからすでに 40年余りが経っている。写真集に添えられた短編小説には女性が人生の折々に感じるやりきれない場面が描かれている。その感情を21世紀の日本で私が共有で きるのはなぜだろうか。私は無粋であろうとも怠らず言葉にする。これは「今さら」の話 ではない。時代は回るというけれど、今は一回りする前の時代なのではないだろうか。
「自分はフェミニストだ」と言うことすら相当に難しい。見えないが確固とした圧力が ある。男性と女性が平等だと思っている人は性別も何も問わず誰でも皆フェミニストだ。 まずは、それくらいに考えてみてはどうだろうか。
蔵 真墨 2106 秋
写真集 『 Men are Beautiful 』
頁 :64ページ 上製本 A4変型 図版47点
著 者:蔵 真墨
寄 稿:笠原美智子
デザイン:原 耕一
編 集:大田通貴
発 行:Urgent Press
定 価:4,500円+税
発行部数:550部