渡辺眸は、唯一撮影を許された女性写真家としてバリケード内に留まり、東大全共闘と活動を共にしながら、1969年1月の安田講堂攻防戦、大学内での集会やデモを含め、同年9月までの闘争の日々を撮り続けました。彼女の写真からは、"闘争"の写真だけでなくバリケード内での彼らの生活を垣間見ることができます。彼女が撮り納めた写真群から今の私たちは何を感じられるのでしょうか。シンボルになりつつある「1968年」を風化させないために、今年50年を迎える節目にもう一度考え直すことができるきっかけになればと思います。
フォトドキュメント「東大全共闘1968- 1969」 ( 角川ソフィア文庫 )
あのときから半世紀。当時の熱気を今に伝える伝説のフォトアーカイブ。「連帯を求めて孤立を恐れず」から始まる安田講堂内の落書き、ヘルメットと防塵マスクで顔を覆った学生たちによるデモ・集会、ガス銃を向ける機動隊……日本における「1968」を象徴する東大闘争。専門学校を出たばかりの女性写真家は、東大全共闘とあらゆる活動を共にしながら、闘いの日々を撮り続けた。
渡辺眸(わたなべ・ひとみ)
写真家。1968年、東京綜合写真専門学校卒業。卒業時の制作展で「香具師の世界」を発表し、その後も撮り続けて「アサヒグラフ」「写真映像」に作品が掲載される。同じ頃、新宿の街を撮る中で全共闘ムーヴメントに出合い、ただ一人、東大全共闘のバリケード内部での撮影を許された。72年にアジア各国を旅しインド、ネパールを初めて訪れた際、魂の源郷と感じてしばらく暮らす。帰国後「命あるもの」へのメッセージとしてスピリチュアル・ドキュメントを軸に撮っている。最新作に『TEKIYA 香具師』(地湧社)。