今回の個展では、うねる波や渦、大気の流れといった自然界の要素を、変転する鮮やかな色彩と形象とに置換した絵画作品、また宇宙空間における遠大な距離を示唆しながらも、卑近な看板や標識、カードゲームなどの形状を用いて制作された立体やレリーフ作品が展示されます。何万光年という遥か彼方からの視線を仮定し介入させることによって、地球上の現在の場所、時間が、ズレを伴った特異なものとして感知されることになり、作品は不穏かつユーモラスな様相を帯びていきます。
白井は ’90年代より、自然界と文明社会の日常的な象徴との交換が可能となる境界について、探究と制作活動を行って来ました。その表現の媒体は多岐に渡り、有限な時間や空間をその外部に向けて開く可能性を示唆した境界標としての立体作品、よく知られた架空の物語と史実を混在させ、日本の近代化の欲望と芸術との関係を示唆しながら、現前する身体性の強度を提示する映像作品など、人間存在と時間、空間の関係についての見解を、作品を通して更新し追求し続けています。近年は絵画やタペストリー状の作品の限定されたフレームの中に、異なる時間を織り込み、天体や波の動き、無限性について示唆した制作を展開しています。
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