(JP) アーティスト:仙谷 朋子
雨や土の匂いで昔訪れた森を思い出したり、すれ違い時の人の香りでいつかの記憶が思い出されたり、一瞬にかつての"印象"を思い出すことがある。プルーストの世界*1においては、紅茶に浸したプティット・マドレーヌの味わいによって、かつて住んでいたコンブレーでの日々を回帰した、という挿話がある。ところで写真も、そういった無意志的記憶を想起させるツールかもしれないと思う。写真とは視覚における無意識を映すものであり、写真を見る人自身の視線や視点をその人自身の内側へと向かわせることになる。
見ている自分は 見られる対象となる
写真体験は、写真を媒介して自分自身のうちに深く"降りていく"時間を得ることなのかもしれない。しかしそれは過去への後退ではなく、かつての印象の再認であり、それを起点とした未来の自分が選ぶ様々なVisionに繋がっていくのではないかと思う。つねに時間の中に私たちは在り、見覚えのない写真からは現実とは違った時間が溢れ出し、記憶の奥底が見えてくるかもしれない。